妊娠をきっかけに、退職を決断する女性は少なくありません。退職のタイミングや手続きなど、よくある疑問をまとめました。失業保険の延長手続きをはじめ、妊婦だからこそ知っておきたい退職にまつわる手続きも紹介します。妊娠で退職を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。
妊娠で退職するタイミングはいつがいい?
妊娠で仕事を辞めると決めたとき、まず悩むのが退職のタイミングでしょう。産休に入るまでに早めに退職するなら、どのタイミングがベストなのでしょうか?3つの時期に分けて解説します。
妊娠が分かってすぐ退職する
まずは「妊娠が分かってすぐに退職する」ケースです。妊娠初期はつわりに悩まされることも多く、心身共に不安定な時期です。つわりがひどくて出勤できない、思うように仕事ができないことが気がかりでストレスになる……こんな場合は、思い切って妊娠初期に退職するのも一つの選択肢です。
安定期に退職する
続いて「安定期に退職する」ケースです。妊娠中期になると一般的に体調は安定しますが、つわりが続く妊婦さんもいます。しかもおなかが大きくなり始めるので、満員電車に乗ることに抵抗をおぼえる人も少なくありません。母子の体を守るために、安定期の退職が必要な場合もあるのです。
産休に入る前に退職する
そして「産休に入る前に退職する」ケースです。出産後は赤ちゃんにかかりっきりになります。自由な外出を楽しむために退職し、産休を待たずに退職するのも一つの手段です。里帰り出産の準備をしたり、ベビーグッズを揃えたり、準備期間として退職後の時間を有効活用できます。
妊娠中に退職したママがもらえるお金は?
妊娠中に退職すると、勤続年数などに応じて退職金をもらえる場合があります。
その他、健康保険から支給される「出産育児一時金」や「出産手当金」などもあります。それぞれ見てみましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、妊娠4か月以上で出産するすべての健康保険加入者に支給されるお金です。
原則として一律42万円もらえます。本来は健康保険加入が条件ですが、「退職後6か月以内の出産」であり、なおかつ「勤務先の健康保険に継続して1年以上加入していた」場合は支給対象です。夫の扶養に入った場合は、夫に対して同額の「家族出産育児一時金」が支給されます。
出産手当金
出産手当金とは、出産により休業する健康保険加入者に支給されるお金です。
給与額や産休の日数によって、もらえる金額は変わります。本来は産休中で給与がもらえない場合に支給されますが、「出産日もしくは出産予定日から42日以内の退職」であり、なおかつ「勤務先の健康保険に継続して1年以上加入していた」場合は、既に退職した妊婦さんも受け取ることができます。
42日というのがポイントですね!43日前に退職すると、出産手当金がもらえないということでしょうか?
そうじゃ。たった1日だが、大きな違いじゃのう。もちろん体調が最優先じゃが、損しないよう気をつけたいものじゃ。
ところで妊娠で退職する場合、失業保険はもらえるのでしょうか?
では次は、失業保険について説明しようかのう。
妊娠で退職、失業保険はどうなる?
雇用保険に入っていれば、失業保険を受けとることができます。では妊娠で退職する場合はどうなるのでしょうか?妊娠で退職する場合に知っておきたい情報をまとめました。
延長手続きをすれば受け取れる!
失業保険は「働く意思があるのに、就職できない人」のためにある雇用保険の制度です。そのため、すぐに働けない妊婦は、本来は対象外です。ただし失業保険には特別な措置があります。退職後に受給期間の延長手続きをしておくと、将来受け取ることができます。忘れず手続きを行いましょう。
最長4年以内に受け取ればOK
失業保険の本来の受給期間は1年です。延長手続きをしておくと、1年しかない受給期間に最長3年がプラスされます。つまり、あわせて最長4年以内に受け取ればいいということ。子育てがひと段落し、再就職のための活動を始めたころに失業保険を受け取ることができます。
できるだけ早めに手続きを!
延長手続きができる期間は、以前は限られていました。ただし平成29年の制度改正により、今は「延長後の受給期間の最後の日」までの間であれば、申請が可能になっています。ただし遅くなると、支給される日数が減るおそれがありますから、早めに越したことはありません。
(参考)厚生労働省「受給期間延長の申請期限を変更します」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf
では退職したら、すぐ手続きしに行くといいんですね!
いや、一定の期間を経ないと、手続きができんので注意じゃ。
いつから手続きできますか?
手続きできるのは、「働くことができない状態が30日以上続いた場合」じゃ。覚えておくように!
妊娠で退職した後、保険証は?
妊娠していれば、健診のために病院に通います。妊娠中に退職した場合、保健証はどうすればいいのか気になる人も多いことでしょう。保険についてお伝えします。
退職したら、保険証は会社に返却
社員として加入している健康保険は、退職すると加入資格を失います。つまり保険証は無効になるということです。
健康保険証が使えるのは、退職日当日までです。翌日になると使えません。無効になった保険証は、すみやかに会社に返却しましょう。
次に加入する健康保険、選択肢は3つ
妊娠中に退職する場合、次に加入する健康保険については、次の3つの選択肢があります。
- 扶養家族として夫の健康保険に加入する
- 勤務先の健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
それぞれについて見てみましょう。
選択肢(1)扶養家族として夫の健康保険に加入する
多いのが、夫の扶養に入るケースです。出産によってしばらく収入が見込めない場合は、基本的に扶養に入るのが良いでしょう。多くの場合、必要書類さえ提出すれば、夫の会社がすべて手続きをしてくれます。扶養手続きをしたい旨を、夫から会社に伝えてもらいましょう。
選択肢(2)勤務先の健康保険を任意継続する
扶養に入れない場合は、任意継続という方法があります。退職しても、会社で加入していた健康保険を2年間継続することができるのです。ただし任意継続のためには、一定の条件を満たす必要があります。保険によって条件が異なりますので、健康保険組合に問い合わせましょう。
選択肢(3)国民健康保険に加入する
夫の扶養に入れない場合、国民健康保険に加入する方法もあります。ただし保険料は、前年の収入をもとに算出されるため、1年目は高めになる傾向があります。国民健康保険と任意継続どっちが得なのか、比較して決めると良いでしょう。
基本的には扶養に入るかんじですね!
うむ。ただし一定以上の収入があると、扶養に入ることができん。詳しくは健康保険組合の規定を確認しなくてはいかんぞ。
妊娠して退職すると、いろいろ考えなくてはいけないんですね!あ、確定申告も必要なんでしょうか!?なんだかむずかしそう……。
妊娠して退職するなら、したほうが得なケースが多いぞ。最後に、確定申告についても説明しておこうかのう。
妊娠で退職した場合、確定申告は必要?
会社員として働いていた場合、確定申告にはなじみがありません。ただ妊娠して退職した場合、確定申告することで納めすぎた税金が返ってくる可能性があります。面倒だと思わず、ぜひチャレンジしてください。
退職すると、年末調整がなくなる!
会社員の場合、所得税は会社が事前に想定した金額を給与やボーナスから差し引いてくれます。この仕組みを「源泉徴収」といい、払い過ぎた分の所得税が返ってくるのが「年末調整」です。
退職すると年末調整が受けられません。納めすぎの場合は、確定申告することで戻ってきます。
確定申告に必要な書類
確定申告するには、会社から退職時に受け取った源泉徴収票が必要です。また生命保険や損害保険などに加入している場合、控除の適用を受けることができます。秋以降になると保険会社から控除証明書が届きます。こちらも確定申告時に必要ですから、大事に保管してください。
確定申告の大まかな流れ
まずは確定申告書類を入手します。主な方法は「国税庁のウェブサイトからファイルをダウンロードする」「税務署や申告相談会場に取りに行く」という2つがあります。
手引きに従って記入したら、期間内に提出しましょう。その後、申告から1~2か月で還付金が振り込まれます。
申告会場に行けば、相談コーナーが設けてある。パソコンで申告書を作ることもできるし、サポートしてくれるスタッフもおるぞ。
まとめ
妊娠が分かったら、仕事を続けるか辞めるか迷うことでしょう。もし退職すると決めたら、辞める時期はいつがベストなのか、具体的な計画を立てましょう。
気持ちよく退職するには、引き継ぎが大切です。退職するタイミング決まったら、引き継ぎの準備を始めましょう。ぜひ別記事「退職の引き継ぎ5つのポイント!引継書や資料の作り方も解説」も参考にしながら、後任の担当者が使いやすい資料を作ってください。
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