人手不足が続いている中、人材の確保に頭を悩ませている企業が少なくありません。
そのため、退職しようとする社員は引き止められ、退職したら賠償を訴えると言われるケースもあるようです。
家庭の事情などやむを得ない理由で、突然退職しなければならないこともあります。
法律の規定はどのようになっているのか解説します。
辞めたいだけなのに「賠償」とかいわれると驚いちゃいますよね。
退職問題が法律問題になるとは思っておらんからのう。
ほんとうに賠償しなきゃいけないなんて事があるのか、詳しく教えてください。
退職時の規定は民法で定める
労働基準法では社員の意思による退職を保障しており、会社は退職することを拒否できません。
ただし、退職する際の規定は民法で定めています。
期間を定めない雇用契約の場合
期間を定めない雇用契約とは雇用期間を何年とか、月日までと限定せず、雇用契約を結ぶことです。
正社員、派遣社員、パートなど雇用形態は問いません。
退職の自由は保障されていますが、退職の14日前までに申し入れする必要があります。
また、期間で報酬が支払われる月給制、年俸制などの場合は別途ルールが定められ、給与の算定期間の前半に退職を申し入れることとされています。
厚生労働省:退職の申出は2週間前までに
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/library/miyagi-roudoukyoku/window/img/kiso_04.pdf
月給制のケース
12月末に退職するなら、15日までに退職の申し入れをする必要があります。
年俸制のケース
年俸制など6ヶ月以上の期間で報酬を支給されている場合は、3ヶ月前までに退職の申し入れをすることが必要です。
1~12月の期間で年俸制の給与を支給されている場合、12月末をもって退職するなら、9月末までに退職の意思表明をすれば、退職することができます。
期間を定めた雇用契約の場合
期間を定めた雇用契約とは年月日までと期間を限定し、雇用契約を結ぶことです。
この場合、基本的に期間が満了しないうちに退職はできません。ただし、やむを得ない理由があれば、直ちに退職することができます。
退職時の規定は民法で判断
一般的に退職時の規定を就業規則に記載していますが、民法の方が優先されます。
退職申し入れ時期の規定は無効
就業規則に退職日の○ヶ月前までに申し入れると書かれているケースが見られます。
ただ、民法に規定された14日よりも期間を長く定めていても、法律では無効となる場合が多いです。
自動的に退職することも可能
就業規則に○ヶ月前と記載されていても、申し出後14日経過すれば、自動的に退職することができます。
民法で定められた一定の期間を経過すれば退職できるんですね。
会社からなんと言われようと、社員が退職する意思を伝えたら会社は拒否できんということはしっかり覚えておくんじゃよ。
突然の退職も認められる?
やむを得ない理由
契約社員など有期雇用の契約でもやむを得ない理由があれば、期間が満了していなくても、すぐに退職することが認められています。
理由に関する規定はありませんが、妊娠、出産、育児や家族の病気、介護など家庭的な事情が考えられます。
また、パワハラやセクハラがある、残業時間が月100時間を超える、賃金の未払いがあるなど会社に不当行為があった場合も、やむを得ない理由に相当すると考えられます。
労働条件が異なる場合
労働基準法では入社前に会社が示した雇用条件と、入社後の実際の条件が異なる場合、即日退職することが認められています。
また、就職するために転居した社員が、帰郷するために必要な旅費を負担することが義務付けられています。
支払い期日も14日以内と定められています。
雇用条件による即日退職は有期雇用、無期雇用など雇用期間の形態に拘わらず、認められている権利です。
損害賠償の恐れがあるケース
契約社員の中途退職
契約社員など有期雇用の従業員はやむを得ない理由があれば、契約期間が満了していなくても退職することができますが、その理由が過失によるものであれば、損害賠償を請求することができます。
やむを得ない理由があっても、会社と退職の合意が成立しない場合、会社から損害賠償を請求される可能性があります。
無断欠勤のまま出社しない
社員が会社に何の連絡をせず、突然出社しなくなり、無断欠勤が続くと、会社として対応に困ります。
損害賠償を請求される可能性もありますが、就業規則により懲戒解雇、または退職の扱いとなる可能性もあります。
故意や重大な過失で損害を与える
会社側が社員に損害賠償できるのは、故意や重大な過失で会社側に損害を与えるケースです。
退職することとは関わりなく、在職中に会社側に損害を与えたのであれば、退職する際に損害賠償を請求され、それが認められるケースがあります。
「研修費用やパソコンなどに掛かった費用を払え」なんてのもよく聞く話です。
それは法的根拠のない脅しじゃよ!色々難癖つけて「辞めさせない」もしくは「お金をとる」なんてのは経営者として問題外じゃ。
退職による損害賠償の例は少ない
会社が損害賠償を訴えない理由
退職により従業員が一時的に不足しても、会社の業務体制を整えるのは会社の責任です。
また、請求できる金額が少なく、裁判で争うことになると裁判費用と手間がかかります。
例え請求が認められたとしても、従業員に支払い能力がなければ賠償額を回収できません。
以上の理由により、会社が退職を理由に損害賠償を請求するケースは極めて稀です。
退職を引き止める脅しが多い
退職を申し入れた社員に損害賠償を請求するというのは、多くの場合、引き止めるための脅しに過ぎません。
突然の退職でも正当な理由があれば、気にする必要はないでしょう。
会社に対し、賠償金を支払うなど意思表示しないようにしてください。
退職による損害賠償の請求は無効
労働基準法では雇用契約の履行がされない場合、違約金や損害賠償の請求は禁止するとあります。
また、研修費用などの返還請求も原則認めないことになっています。
社員の退職で損害賠償や研修費用の請求を規定しても、法律上は無効になります。
就業規則には従業員の故意や重大な過失で会社に損害を与えた場合のみ、規定することが可能です。
「損害賠償」なんて言われても、必要以上に動揺することはないんですね。
「会社のいう通りにしなきゃいけない」ということは全くないんじゃよ。会社の言い分の根拠が正当かどうか見極めるんじゃ。
まとめ
やむを得ない理由で突然退職することになった場合、就業規則を確認することも必要ですが、民法や労働基準法の判断が優先されます。
正当な理由による退職であれば、会社から損害賠償を請求される心配はありません。
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